家族葬と密葬の違い

家族葬と密葬は、どちらも親しい人たちだけで行う葬儀という点では似ているものの、その目的や進め方には大きな違いがあります。まず、家族葬とは、親族やごく親しい友人のみを招いて行う小規模な葬儀のことです。一般会葬者は呼ばず、家族だけで故人との最後の時間をゆっくりと過ごすことを目的としています。これは、近年のライフスタイルや価値観の変化により、シンプルで温かみのある別れを望む人が増えていることが背景にあります。

家族葬のメリットは、まず経済的な負担が少ないことです。一般葬に比べて会場費や供花、返礼品の数も少なくて済むため、比較的費用を抑えられます。また、親しい人たちだけで行うため、形式ばらずに落ち着いた雰囲気で見送れるのも魅力です。葬儀の進行も自由度が高く、故人が好きだった音楽を流したり、形式にとらわれない献花や弔辞を行ったりと、オリジナルな演出が可能です。

しかし、家族葬にはデメリットもあります。特に注意が必要なのは、事前に家族葬であることを知らせていなかった場合、後から訃報を知った人たちが弔問に訪れる可能性です。これに対しては、事前に「家族葬で執り行いました」と通知するか、後日にお別れ会や法要を開くことで対応します。また、家族葬が故人の交友関係に対して冷たい印象を与えてしまうこともあるため、その点も配慮が必要です。

一方、密葬は本葬の前に行われる、限られた人たちだけの非公開の葬儀です。主に著名人や社会的に立場のある人が亡くなった際、突然の訃報による混乱を避けるために用いられます。密葬では親族やごく近しい友人だけが参列し、故人を見送った後、後日に一般会葬者を迎える本葬やお別れ会が開かれます。つまり、密葬はあくまで本葬までの一時的な措置であり、正式な別れの場は後日に設けられるのです。

密葬のメリットは、突然の訃報で混乱を避けられる点と、親族だけで落ち着いてお別れができる点です。特に芸能人や企業の代表者など、マスコミの注目を浴びやすい立場の人にとっては、必要不可欠な形式とも言えます。また、葬儀の準備期間を確保できるため、本葬を落ち着いて準備できるという利点もあります。

しかし、密葬は家族葬に比べて費用がかかります。密葬と本葬を二度行うため、それぞれの会場費や供花、返礼品の用意が必要です。また、密葬のみで終えた場合、一般会葬者から「なぜ知らせてくれなかったのか」といった誤解や不満を招くこともあります。したがって、密葬を選ぶ際は、後日に本葬やお別れ会を行うことが前提となります。

このように、家族葬と密葬はどちらも「親しい人だけで見送りたい」という共通点があるものの、その目的や方法、費用面で異なります。家族葬は一度で完結し、費用も抑えられるシンプルな形式ですが、密葬は本葬の前段階として行われ、二度の葬儀を前提としています。どちらを選ぶかは、故人や遺族の意向、交友関係の広さ、そして費用の面を総合的に考える必要があります。最も大切なのは、故人への感謝と尊敬の気持ちをどう形にするかという点です。葬儀の形式にこだわりすぎず、遺族が納得できる形で見送ることが重要です。